サンプル配布の人に悉くスルーされた話

先日、娘の日用品を買い足しに子供用品店へ行った時のこと。

陳列棚に向かい商品を物色していると、少し離れたところから「サンプルをお配りしています」と声が聞こえた。

目をやると通路で子供用おむつのブランド名が書かれたジャケットを着た男性スタッフ2人が、通りかかる子連れの親たちにサイズなどを聞きつつおむつのサンプルを配っていた。

 

基本貧乏性の私は、(ほーん、普段使ってないブランドだけどまあたくさんあって困るものじゃないしな)とそのスタッフたちに近づいた。ただそこはプライドもあるため、あくまで何気なく、通路沿いの別の商品に興味があるような様子で、だ。

「どうぞ」と声をかけられる気満々だった。なんなら「Mサイズをください」と声を発する準備もできていた。

しかし、スタッフは私をスルーした。

タイミングが悪かったかな、とその奥にいたもうひとりのスタッフに近づくが、またしてもスルー。

 商品を探すふりをしてスタッフのそばでしばし立ち止まってもみた。しかし声はかからない。

 

ショックだった。

 

 こんな時普段の私なら、スタッフに「私にもください」と声をかけることができる。

子供用おむつなら私にももらう権利はあるはずだし、なにより普段から、(見ず知らずの相手からなら)一瞬なんと思われるかより、自分の欲望が優先する性分なのだ。

ひとりカラオケはもちろん、ひとり焼肉、ひとりディズニーシーを楽しめる私にとって、この一時接するだけの人間に「そのサンプルひとつください」と声をかけることなど簡単なのである。

 

しかし、この時は違った。

私は恐怖していた。スタッフたちの私への態度がもはや無視であったからだ。明らかに私を除け者とする、目に見えないがぶ厚く大きな壁がそこにはあった。

買い物かごにはベビー用歯ブラシにベビー用保湿剤!どこからどう見ても子持ちじゃないか!なぜだ!?私の何がいけないんだ…!!

(今思うとこの恐怖感には、配布していたスタッフが普段あまり触れあうことのない若い男性だったことがおそらく大きく影響している。)

 

 自分から声をかけられないのなら、私にできることは声をかけてもらうのを待つことだけだ。声をかけてもらうためには?ひたすらスタッフのそばを歩き回るしかない。

しかしそれでも、私にサンプルが手渡されることはなかった。

これ以上は不審だ、これで最後にしよう、とレジへ向かいながら再びスタッフの横を通ったが、結局スルーされた。

 

もういい、諦めよう…。完全なる敗北である。

私ではないだれかにサンプルを配り続けるスタッフたちの声を背に、私はその場をあとにした。この寂寥感を例えるなら、クレーンゲームにざぶざぶとお金をつぎ込んだものの結局何も取れずに所持金を尽かしてゲームセンターを立ち去る時のようなわびしさだった。(我ながらしょうもない例えだ。)楽しいとどれくらいお金使ってるかわかんなくなっちゃうよね。

 

失意のまま帰宅し夫に、自分がどんなに不当な扱いを受けたか、この一連をよく話して聞かせた。

すると夫から一言、「子供連れてなかったからでしょ」。

はい。